古代芸術拓本稀観

  戦前の仏教美術を中心とする雑誌 「寧楽」の編集同人、久留春年氏が20年来収集珍蔵したる拓本を中心として刊行したもので. 少なくとも三集ある。 発行は、奈良の木原文進堂となっている。発行日が書いて無いが、寧楽第8号、によると、昭和二年七月一日 ということのようだ。どうもシートをセットにして袋に入れて販売したようだ。
  各集 10点のシートに図版が貼ってあるが全部が拓本ではなく、4点は実測図や模式図であるので、拓本は26点である。印刷図版紙の大きさは35.5x25.7cmなので、 縮小して印刷してあるが、いずれもコロタイプ精印で充分鑑賞するに足りる。
 ここでは、驚異的な救世観音光背の拓本(1集)、実際にみることが困難な橘夫人念持仏阿弥陀三尊背後の障屏拓本(1集)を紹介する。この障屏の線の美しさは無類だろう。ただ、更に外側に1枚づつ小さな板が付属しているが、この拓本では採拓されていない。 また、救世観音の光背については、昔A Halo of 7th century Japan で記述したとおり、深い問題があるが、なによりも木造金箔の国宝を拓本にとるという乱暴なことができた時代があるということが怖ろしいし、印刷しかみることはできないが、もとの拓本は極めて希な拓本であることは疑いないだろう。

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by reijiyam | 2009-01-11 10:22 | 蔵書 | Comments(0)
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