この薄い(58p)本はウォレスコレクションのカッティングCuttingのカタログである。カッティングというのは、中世ルネッサンスの装飾写本の画のところだけや1頁だけを切り抜いたものだ。サミュエル=ピープスの日記にも載っているそうで、現存するピープスのスクラップブックには、その現物の貼り付けがあるそうだ。
19世紀にはずいぶん行われたので、オックスフォード大学の図書館には切り取りで穴だらけになった写本がかなりあるらしい。特にイタリアがナポレオン軍に占領されたあと教会修道院から合唱用のクワイアブックが流出したが、これはとっても大きなものなので売りにくい。そのためこのような切り取りが頻発したそうだ。この32点のコレクションでも過半はイタリアである。 これで、思い出すのは、日本の手鑑である。手鑑というのは、この手鑑「藻塩草」のようなもので、奈良平安鎌倉の古筆写経を切断して貼り込んだアルバムで、そうとう流行し、そのため古い歌集などがガンガン切断された。 この手鑑制作を文化破壊というべきか、1巻一度に焼失するより断片でも残るから良いとすべきか、議論があるが、日本人はどうこうという論者もないわけではない。西洋でも事情はこのとおり変わらないのだ。無知は罪。 さて、このウォレスコレクションは、ロンドンの貴族のコレクションを、その館ハートフォード館で観るという贅沢な美術館である。ベーカー街の近くであり、ロンドンでは是非訪ねたいところだ。 Wallace Collection, Catalogue of Illuminated Manusccript Cuttings,1980, London,58p
by reijiyam
| 2007-09-18 12:45
| 蔵書
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