開通褒斜道刻石の旧拓本

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 書道 第八巻第十一号  昭和14年  泰東書道会から、抜き書き
  中村不折
しかるに、先年、大正十一年頃であった。支那公使の胡維徳といふ人が法帖を見に来いといふので出懸けた。澤山陳列してあったがこれといふよいものも見當らなかった。最後の一室の小暗い処に見出したのが、舊拓のであった。一字も欠損して居ない神采の爛々たるものであった。一見実に卒倒しさうに感じた。それから御馳走になったが、その席であつかましく胡公使に割受を迫ったが、公使は只笑ってのみ居って相手にしない。猶も根強くねだってとうとう拙画と交換する約束で持ち帰った。本號に撮影したのがこれである。

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上イメージは、
2011年、東京国立博物館・書道博物館共催、特別展「拓本とその流転」、図録から。「拓本とその流転」、図録では、「胡維徳」を「顧維徳」と誤植しているので要注意。
 この拓本は、もともと切断して、大型の折り本に装丁されている。比較的薄い上品な墨で丁寧に制作された良い拓本である。現在、日本に同等クラスの拓本は少なくとも3点あるようだ。ただ、切っていない全套のものでは1点、個人蔵であることしか知らない。
 ただ、公共的な施設に所蔵されているものは、この書道博物館のものだけかもしれない。未確認だが、成田山書道博物館に松井如流先生旧蔵のものがあるかもしれない。
 清末以降の新しい拓本は、かなり多く所蔵されているが、字がかなり改竄されているので問題がある。大阪市立美術館の岡村コレクションの拓本にあるものも旧拓本ではない。書壇院のものも旧拓本では無い。

 
by reijiyam | 2025-05-12 18:14 | 抜き書き | Comments(0)
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