歴代帝王図巻の原状

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https://www.mfa.org/collections/object/the-thirteen-emperors-29071 
これは、よく教科書にも隋の帝王の肖像画として使われることが多い絵画だが、いろいろ問題がある。
 まず現在は彩色が強い絵巻物だが、中華民国初期までは、実は色があまりない白描に近い作品だったようである。
当時、モノクロで印刷された画集が出版されている。それをみると、現在はっきりみえる衣装の模様などほとんどない。あれは皆 100年以内のつくりものだったのか、と唖然とする。1917年当時のカラー写真はないし、カラー模写本もないようなので、このモノクロから想像するほかないのだが、ちょっとこれはひどすぎる加筆ではないかと思う。
 実は、ボストンのものとこの影印とは別本かとも思ったが絹の痛んだ箇所や布目がそっくりなので、同一物であることは間違いない。

  五馬図巻は、モノクロ写真しかなく墨一色の白描だとばかりおもわれていたが、最近現物が再出現したら、淡彩もあったので驚かれた。その一方、帝王図は、昔の教科書はモノクロ(ただし補彩・加筆後の状態でのモノクロ写真、たぶん昭和3年 大塚巧芸社のものがおおもと)だったが、二〇世紀末ぐらいから、彩色図版が普及していた。
 このため、実はもともと白描に近いものであったことが忘れさられてしまっているようだ。最近、中国で出版されたものは、ひどいことに、なんかおかしな絵が追加されており、研究者・鑑賞者を乱すものである。
 この古いモノクロ図版は、 戦後の1982年刊行の「古帝王図」 人民美術出版社、北京でも翻印してあるので、みることができないわけでもないのだが、この本は、加筆 補彩のことを明記してないので、なんだかよくわからない矛盾した本になっている。

 ただ、そうはいっても、この歴代帝王図は、敦煌壁画の維摩経変相の帝王図、北魏の龍門石窟の帝王行列の浮き彫りなどと行列や衣装、おつきの姿勢なども類似しているので、帝王図像としては古い図像を伝えるもので、宋以後にでっちあげた図像ではないようである。

そこで、最も古い加筆前の状態の影印から、全画像を紹介してみたい。まず六枚。あとは続篇で。
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by reijiyam | 2023-09-30 08:14 | 蔵書 | Comments(0)
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