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張遷碑 三拓本 比較

二玄社の中国法書選に入っている張遷碑 翁綬祺本(以下  翁本)はあまり良いものではないですが、大手の出版社でもあり、それなりに普及しているのは困りものです。

そこで、張遷碑の各拓本で、新旧、精粗の比較をやってみましょう。


 現在、日本で一番良い拓本は台東区書道博物館所蔵の拓本です。
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 イメージで、左から、書道博物館本、真ん中が貧架の嘉慶ごろの拓本、右が中国法書選の翁本、これでみたら、「五」の字のキズが大きくなっていて、翁本が新しいことがわかるでしょう。

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 同じような損傷の拡大は、この「囚」字の下部にもみることができます。

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ところが、この「帝」字の右側は、翁本は一見、欠けていないようにみえますね。でも、この右側の線は書道博物館本とは違います。つまり墨を塗って、欠けていないようにみせかけたものなんですね。

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 つぎにまた、別の部分をみてみましょう。一番下の「宿」字の右上の損傷は左から右へ拡大していますね。また、その上の「犁種」の右側は翁本では大きく損傷していて、しかも墨を塗って(濃くつけて)ごまかしています。


 こういう、補墨(墨塗り)によるごまかしは結構あるので注意が必要です。

 翁本では法式善(1752-1813)などの跋がついているので、嘉慶以前の拓本のようにみえるのですが、どうもこれらの跋は他のところからもってきて貼り付けたもののようで、最初からこの拓本についていたものだとはおもえません。書画の場合もそうですが、本体を古く立派なものにみせるために他から跋文や観記を切り取ってきて組み合わせるのはよくあることです。



 他の拓本でネットでみることのできるものでは

張遷碑  淑徳大学のサイト


が割と旧拓しかも精拓で良いみたいですね。ここは西林昭一先生の肝いりだから二玄社も使えるんじゃないかな。


なお、
早稲田の古典籍データベースにある

張遷碑 (PDFファイル) 


は、かなり墨が重いようですが、わりと新しい。 清末民国?か?? あるいは贋物重刻本か? 本物としてもたぶん翁本と変わらない新しい時代のものですね。

by reijiyam | 2015-02-22 10:42 | ニュースとエッセイ | Comments(0)

韮花帖 3種

 五代時代は乱世だったので、あまり有名な書道家はいないが、
楊凝式は、一番 名前が出る人であり、真跡・模写本らしいものも残っている。

 その中で、名前だけは有名で、多くの人が臨書しているのが、この韮花帖である。実際は、たいていは、たぶん法帖拓本をもとに臨書したんだろうなあ。

 この模写本は3種類 確認されていて、一応、羅振玉が百爵斎名人法書に影印したものが最良本とされている。この羅振玉本のカラー影印がインターネットで公開されているので、意外に思った、どうも北京の故宮博物院にあるという。ただ、確認はしていない。
 他の2つは、清朝宮廷にあったものが1点、これは現在 無錫の博物館にあるはずだ。 もう一つは台湾の蘭千山館こと林柏寿先生の所蔵だったもの、これはまだ林家にあるのか台北故宮に寄託されているのか、行方不明なのかわからない。

 この際、3種を並べてみたい。




楊凝式の書には、独特の癖があって面白いので、昔から関心をもってきたが、この韮花帖は一番おもしろみのない気のないものなので、なんで昔から尊重されていたものなのかは不思議だった。

 そうはいっても、ちょっと変わった書風には違いない。
昔々、奈良国立博物館で入唐僧の確か円珍が唐人と交わした文書を展示していたとき、これとよく似た書風だったので、ああこれかな!  晩唐の一書風だったのか?と思ったことがある。



羅振玉 本(北京 故宮??)

 
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清朝 内府 本 ( 無錫)

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蘭千山館

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by reijiyam | 2015-02-20 09:46 | ニュースとエッセイ | Comments(0)