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蘿軒變古箋譜

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明時代末期  天啓6年の序があるこの本は2冊完本(たぶん)が上海博物館に1963年に入った。
 木版画で制作した模様や絵のある便箋のサンプルを集成して本にしたものである。

従来、知られていたのは 東京芸術大学にある下冊だけの1冊で、大正12年に大村西崖が図本叢刊の一つとして複刻した(上のイメージ)。この複刻はなかなか良いもので、浮世絵の伝統の上に立って刻工、印工の名前まで入っている。大村氏邸宅は今の神楽坂近くにあったようだ。
この大村西崖氏については、矢代幸雄氏が「忘れえぬ人々」というエッセイ集の一つに生き生きとした思い出を書いている(矢代幸雄著作集に収録)

大正12年1月10日印刷15日発行
大村西崖
   東京牛込矢来町3
刻工 前田賢太郎
印工 本橋貞次郎
 東京京橋銀座3丁目20


ここで、この本に付属したチラシを紹介しておく。こういうものは散逸しやすいものだ。

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 この蘿軒變古箋譜は一部にエンボッシングを使って模様を表している。例えば上の絵の真ん中の鳥はこうだ。

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  また、こういう容器をさりげなくエンボッシングしているのが上品高雅である。

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ところで、大村氏は蘿軒という号から康煕年間の翁嵩年と考えていたのだが、実は上冊には、天啓年間の序があって、呉發祥 の作だということがわかった。同じ蘿軒という名前を使っていたので間違えたのだ。呉發祥 自体、南京の地方の記録にしかでてこない人であったのだから、間違うのも無理はない。

2冊本を収蔵してる、上海博物館も複刻本を出版している。大きな本だったし高価でもあったので、入手してはいないが、ちょっと派手な色になっている。ただ、現在ある本は、350年以上の時間で染料顔料が褪色しているだろう。そういうことを考えると上海がかなり派手に再現したのも間違いとは言えないのかもしれない。

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一方、上海博物館では、蘿軒變古箋譜の一部を使って、本物の使える箋紙を発売したことがある。
これは友人が買ってきたものだが、少し強引に奪うようにして譲ってもらった。
あまり手の込んだ頁ではなく、簡単な動物のところだけを使ったものだが、箋紙そのものなのが嬉しいものである。
by reijiyam | 2012-02-20 09:46 | 蔵書

淳化閣帖 最善本の印影

上海博物館が2003年4月 450万ドルを投じアメリカのEllsworhから淳化閣帖第4、第6、第7、第8の4巻を買った。これは、淳化閣帖 最善本  真宋本と 宣伝されているが、果たしてその名に値するものでしょうか?

2008年8月29日に
安思遠本淳化閣帖への疑問http://plaza.rakuten.co.jp/yamashinaReiji/diary/201008290000/
というものをアップしたが、印章の裏移りがこんなに激しい本は他ではみたことがありません。

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他の李宗翰 旧蔵拓本のカラー写真を出来る限りチェックしてみたが、この「最善本」6,7,8のような裏移りは全くといっていいほどみることができません。だいたい李宗翰に限らず、ごく平凡な古い本や拓本帖でも蔵書印が裏移りがするような例はまずないのです。


 ところが、この場合は、「貴重なはずの」「南宋賈似道(1213-1275)の印」の上にまで裏移りしてしまっています。
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 なんか心配になって私が昔押した蔵書印もひっくりかえしてみてみましたが、そう所蔵環境がいいわけでもないのですが、一つも裏移りはありませんでした。

 実は他でただ一つみたのが、朝日新聞創業者 上野理一さんが蘭亭に押した印で裏移りがあった記憶があります。上野理一さんって結構粗雑なんだなあ。。と感じたものでした。まあ、当時の新聞屋だし、今のマスゴミだからなあ。

 さらにひどいのは、賈似道の貴重な印影の上から、李宗翰の印を押しているこの例まであります。
これは裏移りですらなく確信犯です。

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  どうみてもおかしすぎます。おそらく、あまり知識経験のない後人が急いで押したので、この惨状になったのでしょう。

 6,7,8巻とは異なる淳化閣帖第4は、呉栄光の所蔵であったことはまちがいないようですが、こちらにはそういうひどい裏移りはなく、強いて言えば終わりのほうにひとつ「荷屋所得古刻善本」がうっすらと対面にみえるぐらいです。6,7,8のような激しい裏移りはありません。

 雑誌 書法 2005年8期で、 王鐵という人が「弁疑最善本淳化閣帖」という文を書いてます。これは、歴代の印章が偽印であると主張している物ですが、必ずしも正しいかどうかはわかりません。「偽物だ-」と叫んで自分を売り込む人はずいぶん多いので、眉つばもので、再検討が必要でしょう。ただ、古い時代の記録と現状が合わないことは確かです。また、翁方綱から李宗翰への手紙としてあげている記事を王鐵氏は引用しています。たぶんこの6.7.8のことでしょうが注目に値します。 翁方綱は、「淳化閣帖は孫退谷の印があるが評するに足りないもので、明時代の翻刻本数種と比べると粛府本の下にあるもの」と酷評しています。李宗翰はがっかりして返却したか売り払ったかしたのではないか? 倉にほうりこんでしまったかもしれません。

  おそらく 清時代末期時代に、李宗翰所蔵本が出版されたり高価に取引されたころに細工した人がいたのではないかと考えております。
by reijiyam | 2012-02-11 17:16 | ニュースとエッセイ

北京故宮の古玉のこと

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北京故宮博物院200選展には素晴らしい玉(No,58)も展示されていたが、どうも疑問に思うものもあった。
  例えば No,57だが、図録の拓本イメージを挙げてみる(古代器物の拓本イメージには著作権はない)
  これをみておかしいとおもわないだろうか? どうみても裏か表の彫刻が左右逆だろう?普通こういう神の顔がある彫刻は神の顔の鼻を稜線にして彫るのが普通であろう。では、印刷の間違いで鏡影かとおもったら、そうすると穴の位置がずれてしまう。
 最初にどうも線の彫刻技法に違和感を感じ、風化がないこともちょっとひっかかったが、図録の拓本をみてかなりまずいと思った。ある人によると穴のあけかたにも疑問があるらしい。
  C.T. Looの図録, Chinese Archaic Jades, 1950から、類品の図版をあげておく。迫力が段違いである。同様の玉は大英博物館にもある。

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by reijiyam | 2012-02-07 21:54 | ニュースとエッセイ

夾雪本第八 と潘刻本 淳化閣帖について

夾雪本 と潘氏本淳化閣帖について、
 数年前、故宮博物院の討論サイトで英語で議論したのだが、そののち得た知見も加えてみる。

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(台東区立書道博物館) a 潘刻本

◎夾雪本 が潘氏本を改造したものだという議論
 夾雪本 が潘氏本を改造したものだという議論が香港や中国にはあるがこれは、間違いだと思う。
  まず、第八と第七が別刻らしいので、2つを一緒くたにすることが既に無理であるが、資料が多く痛みが少ない第八で論証する。

理由/根拠:
1. 夾雪本第八 の行間は 潘刻本より 2-12% くらい広い。このためなにか寛弘な感じをうける。
2.夾雪本第八 :取卿女聟帖の「耿」には 剥触がない、また加筆した跡もみえない(原本で観察)。 潘刻本にはあるし、  潘刻本 潘氏跋には 「取卿女聟帖耿字有剥触紋」,とあるから潘刻本 には必ずなければならない。
  3. 夾雪本第八 には 銀錠紋がない。補筆塗りつぶしたあともみえなかった。(原本で観察)

補論:
もし「顧従義 」印 や 「莫是龍」跋があと添えだと仮定すれば, 夾雪本第八 が 潘刻本の再版重刻をいじったものである可能性はないこともない。潘刻本でないことは明らかである。

◎ 第七と第八は別本
  一見して明らかであるが、潘刻本第七の図版がなかなかないので、調査が難しい。
  とはいえ、最近、奇妙なことに気がついた。第八は行間が広いが、第七はむしろ逆に潘刻本より狭くなっているのではないか?という数値的統計が,僅かにある潘刻本図版(上記)との比較ででてきた。
by reijiyam | 2012-02-03 21:24 | ニュースとエッセイ