在昔篇

 楊沂孫(1813-1881)の自作の文章を篆書で書いたもので、戦前には結構、篆書の手本として流布したもののようだ。求古書局の石印本がポピュラーだったらしいが、原拓の法帖はそうなかったものらしい。大東文化に寄贈されている宇野雪村文庫には1帖ある。同じく宇野雪村さんの玄美社で昭57年に出版したことがあるようだ。光緒6年6月の作品。この本の末尾には、趙烈文の跋があり、光緒11年に楊沂孫の子孫が法帖に刻したということを賞賛している。
 「初歩の篆刻講座 第5巻」に縮印があるが、同じ版である。ただ、少し傷みが多いので、貧架の本のほうがやや初拓に近いようである。初歩の篆刻講座のほうが、周囲を切り取っていないが、こちらは罫線ギリギリに切って装幀してある。
 趙烈文の跋の前には呉大徴跋があるが,これは光緒3年に呉大徴が常熟にきたとき作った文章を楊沂孫が書いたもののようだ、呉大徴が書いたような金文風の書なので、呉大徴の書かと思ってしまったがどうも違うようだ。なぜなら、本文が6年の書、呉大徴の文が3年である。楊の書に呉大徴が続けて書いたはずはないわけで、文章を作ったのが3年ということだろう。
 この墨跡は、どうやら常熟図書館にあるらしい。
 楊沂孫の作品は穏和なので、篆書学習の初歩の手本として使われ易く、やや低く観られがちだが、高野切にはじまって高野切に終わるとの言い方があるように、なかなか滋味のある作品だと思う。


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by reijiyam | 2008-12-14 11:35 | 蔵書 | Comments(0)
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