レーモン=クノー  青い花

現代フランス文学で愛読本五指に入る。「地下鉄のザジ」と違って映画にはなりにくいだろうが、忘れがたい場面が多い。とくにラストの縹渺とした幻想的な味わいは無類である。
野蛮さと知性とある種の「善意」を兼ね備えたオージュ公爵はなかなか特異なキャラである。
4章末 オージュ公爵と国王の使いと司祭が互いに腹をさぐりあう場面は、論理の遊びとしても面白いが、直後にジュリアン=グラックの「シルトの岸辺」の文体をパロディしているところがあり爆笑する。
会話が非常に多いが、いずれも日常的でありながら、胸にせまるものが散見する。第20章のオージュ公爵の「それは普通のことかね?」「普通なんてことはなにもありはせん」は特に素晴らしい。
 1970年代、大学紛争当時に翻訳されたものである。翻訳もわりと良いと思う。もともとこういう言葉遊びが多くはいった本は翻訳が非常に難しい。へたをするとかえって難解になってしまう。
どちらかというと大人になってから読んだほうが面白いこういう作品を復刊して欲しいものだ。
左は1965年初版Gallimard, Paris 右は滝田文彦訳、筑摩書房、1969年
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by reijiyam | 2007-06-19 08:22 | 蔵書 | Comments(0)
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