淳化閣帖 最善本の印影

上海博物館が2003年4月 450万ドルを投じアメリカのEllsworhから淳化閣帖第4、第6、第7、第8の4巻を買った。これは、淳化閣帖 最善本  真宋本と 宣伝されているが、果たしてその名に値するものでしょうか?

2008年8月29日に
安思遠本淳化閣帖への疑問http://plaza.rakuten.co.jp/yamashinaReiji/diary/201008290000/
というものをアップしたが、印章の裏移りがこんなに激しい本は他ではみたことがありません。

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他の李宗翰 旧蔵拓本のカラー写真を出来る限りチェックしてみたが、この「最善本」6,7,8のような裏移りは全くといっていいほどみることができません。だいたい李宗翰に限らず、ごく平凡な古い本や拓本帖でも蔵書印が裏移りがするような例はまずないのです。


 ところが、この場合は、「貴重なはずの」「南宋賈似道(1213-1275)の印」の上にまで裏移りしてしまっています。
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 なんか心配になって私が昔押した蔵書印もひっくりかえしてみてみましたが、そう所蔵環境がいいわけでもないのですが、一つも裏移りはありませんでした。

 実は他でただ一つみたのが、朝日新聞創業者 上野理一さんが蘭亭に押した印で裏移りがあった記憶があります。上野理一さんって結構粗雑なんだなあ。。と感じたものでした。まあ、当時の新聞屋だし、今のマスゴミだからなあ。

 さらにひどいのは、賈似道の貴重な印影の上から、李宗翰の印を押しているこの例まであります。
これは裏移りですらなく確信犯です。

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  どうみてもおかしすぎます。おそらく、あまり知識経験のない後人が急いで押したので、この惨状になったのでしょう。

 6,7,8巻とは異なる淳化閣帖第4は、呉栄光の所蔵であったことはまちがいないようですが、こちらにはそういうひどい裏移りはなく、強いて言えば終わりのほうにひとつ「荷屋所得古刻善本」がうっすらと対面にみえるぐらいです。6,7,8のような激しい裏移りはありません。

 雑誌 書法 2005年8期で、 王鐵という人が「弁疑最善本淳化閣帖」という文を書いてます。これは、歴代の印章が偽印であると主張している物ですが、必ずしも正しいかどうかはわかりません。「偽物だ-」と叫んで自分を売り込む人はずいぶん多いので、眉つばもので、再検討が必要でしょう。ただ、古い時代の記録と現状が合わないことは確かです。また、翁方綱から李宗翰への手紙としてあげている記事を王鐵氏は引用しています。たぶんこの6.7.8のことでしょうが注目に値します。 翁方綱は、「淳化閣帖は孫退谷の印があるが評するに足りないもので、明時代の翻刻本数種と比べると粛府本の下にあるもの」と酷評しています。李宗翰はがっかりして返却したか売り払ったかしたのではないか? 倉にほうりこんでしまったかもしれません。

  おそらく 清時代末期時代に、李宗翰所蔵本が出版されたり高価に取引されたころに細工した人がいたのではないかと考えております。
by reijiyam | 2012-02-11 17:16 | ニュースとエッセイ | Comments(0)
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