クリーブランド美術館  雲山図巻の自題


 敦煌本の偽写本のことを読んでいたとき、「偽写本をもとに論文を書くと、全部が無駄になって崩れ落ちてしまう」というような記述があった。絵画においても偽物を真蹟として論をすすめると危険きわまりない。勿論、偽物は本物に似せないといけないことが多いので画風など類似しているという期待はあるし、題跋印章までみんな丸写ししてしまうすざまじい偽物も中華民国期にはあって、まあこういうのは、本物が消滅してしまったあとでは、ある種の資料にはなるわけである。

 いまや原発報道で悪名を馳せ、信用失墜した感のある東大の、小川教授などがとりあげていた 米友仁「雲山図巻」(クリーブランド美術館)http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9f/Cloudy_Mountains1.jpg
にも重要な疑義がある。

 肝腎の米友仁の題字が真蹟ではないようにみえるのだ。他の米友仁書と比較した表を1998年に作って確信した。字形書風がかなり違う。また、北京・大阪・上海の共通性がめだつ。北京の図巻は実見したとき、本体の絵は模写のようだが、跋はひどく傷んで紙質も違い真蹟にみえた。上海の図巻は絵・跋ともに良いようだ。大阪のは断片の切り貼りみたいだが一応古い。
 その後、某教授にも表を送って意見を乞うたが、賛意を得ていた。じゃいったいクリーブランドの題は誰が書いたんだ。また絵は誰が描いたんだろう?

  ひさしぶりにノートをひっくりかえしてとりだしてみた。今ならもっときれいな図版で作成できるだろうが、忘れてしまうといけないのでアップしておこう。

 この絵では自題の位置が他の米友仁画と比べておかしい。他のは大抵絵のあとにあって絵の上にはない。大阪市立美術館のものは明らかに切り貼りしたものだ。もとは絵の後ろにあったのだろうし、絵自体断片のようにみえる。

クリーブランドの雲山図巻は自題が失われたので、オリジナルの文から写して書いたのか? 絵も含めて後世のものなのか?どうもわかりにくい。どちらにせよ米友仁の基準作にはすることはできないだろう。

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by reijiyam | 2011-10-23 12:31 | ニュースとエッセイ
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