琅邪台刻石

 山東省青島近くに秦の始皇帝が建て二世皇帝が追記した石碑で、秦の篆書の例として有名なものである。二世皇帝の部分がわずかに残っている。原石は今は北京の国家博物館(もとの歴史博物館)にある。ところが保存状態が非常に悪く、拓本にとっても朦朧として読みにくい。その点では、文字数が少ない泰山刻石のほうが読みやすいぐらいである。
 文字があまり摩滅していない古い時代の拓本があればいいのだが、これがあまりない。ここであげたのは、阮元旧蔵の全套整紙本。これには上に翁方綱の題がある。阮元が送ってきて急いで題を書けと迫ったらしい。外に車がまっているので急いで書いたと書いてある。
中国美術全集にあげてある拓本よりよほどはっきりみえる。
 琅邪台刻石の影印本ってあまりない。書跡名品叢刊のものは、どうもこの拓本を写真にとって切り貼りし、せん装本にして石印でだしたものの複印らしい。ただ、微妙に違うところもあるので他の拓本を切り貼りしたりいじってあるのかもしれない。名品叢刊以後、琅邪台の拓本はおそろしいぐらい全く影印されないようだ。まあ、ぼやっとしていて習いにくいからだろう。王イ栄の印がある拓本をみたことがあったが、そう強い印象は受けなかったしね。百衲本琅邪台刻石という出版があってきれいに補筆したものだったが、たしかにここまで傷んでるとそういうもののほうがいいかもしれない。あるいはむしろ原拓と百衲本を合冊にして出版するというのが現実的だろう。
 ところでこの琅邪台ってのは色々な漢字で書くようだ。考証学の大学者:翁方綱が「琅邪」と書い
ているし、語石でも同じなのだから、それでいいと思うのだが、「瑯[王+邪]台」とやけに難しく書
いたり「琅[王+邪]台」と書いたりする。簡単な字でよければそれでいいと思うのだが、「邪」を避けようとして色々書いているのかもしれない。

ソース:中華民国時代に上海 藝苑真賞社が出版した「藝圃留眞」という宣紙コロタイプ画集に縮刷
して集録されている。コロタイプなので拡大してもかなりよくみえる。  


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by reijiyam | 2010-11-29 12:46 | 蔵書 | Comments(0)
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