黄庭経

 博文堂でコロタイプ刊行した有名なほうの黄庭経を臨書していたら、さすがにいいものだなあ、と思った。
 黄庭経なんて、アナクロでつまらないものだというイメージがある。王羲之が書いたなんてのは、まず嘘だし、仮に唐以前の書であったにしても模写を繰り返して、しかも石や木に彫ったものだから、もとの書風なんて消えているだろう。おまけに小さな文字だからますます模写による弊害は大きい。これが1字が10cm以上あるような大きな文字なら模写でもある程度 真相が伝えられるものである。
 したがって、まるで信用がないのだが、それでも、この楊賓旧蔵本を臨写していると、なかなか特色のある字形、厚みのある筆法が窺われて、面白い。明時代の祝允明、王寵などの滋味のある楷書はこういうところからきているのだろうし、八大山人の書にも影響しているような気がする。
 いつ、誰が書いたかを抜きにして、書の伝統という意味でも、また習って面白い対象という意味でも良い物だと思った。もっとも、刻本によってはどうしようもない単調平板なものもあるので、この程度の名帖でないと習う意味はない。
 この帖は1行を3字ほど縮めて先送りして、切り貼り、貼り直しをしているので、1行の縦の脈絡が悪い。1字1字はいいのだが、そういう切り貼りを念頭において習う必要はある。
  戦前は、たぶん讃岐の大西帖祖斎の所蔵だったと思うのだが、現在は所蔵不明である(なんと現在は東京国立博物館所蔵になっている。それにしても、一度も展示されているのをみたことがない)。四国の大西家にあるのなら一度みてみたいものだ。 
  1面  22.5x11.5cm
  



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by reijiyam | 2010-03-14 08:37 | 蔵書 | Comments(0)
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