ロシア所蔵西域写本展覧会を観て

ロシア所蔵西域写本の展覧会が京都国立博物館で開催され,2009年7月18日に鑑賞したが、以下の点ともう一つ(これはHPで発表予定)が、書道史的に面白い研究材料になりそうだと感じた。ただ、論文に膨らませるほどの甲斐性がないので、ここに提示して博雅の士の高見を待ちたい。

・五世紀の法華経と書道博物館「老女人経」の書風の類似
展覧会図録 61番の敦煌由来の法華経(左)
は淡褐色の紙で、特に墨だまりはなく、筆画のなかに均一に墨がひろがっている。墨ののりがよいのだろう。書風は台東区立書道博物館所蔵の「老女人経」(集成 第001番)(右)に類似する、特に「是」の酷似は気になる。本文末尾の12行と偈頌と末尾題記から構成されている前半が欠けた巻子だ。本文十二行のほうがやや字が大きいせいか字が良いようにみえる。文字の大小によって同じ人が書いても巧拙がでてくることがあるのは自分の経験でもあるので、そのためだろうか。図録には本文部分の写真がないのが残念であるが、偈頌部分のイメージで推察して欲しい。
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・4、5世紀とされる正法華経の白い紙と書道博物館「法華経方便品」
展覧会図録62番に、4~5世紀とされる敦煌由来の法華経の初期翻訳写本(左)がある。この紙は妙に青白く、灰色の墨罫線がある。 
 よくみると、点画に墨溜まりが多い。そして墨だまりの外が淡墨になっている。
 にじみのない紙なのだろう。なんらかのコーティングによって白さと滲み止めをやっているのではないかと思う。
 台東区立書道博物館所蔵 伝トルファン出土本法華経方便品断片1紙も、やはり妙に白い紙であり近いかもしれない。これは 台東区立書道博物館所蔵 中村不折旧蔵禹域墨書集成(以下 集成)の152番 王樹ナン旧蔵の「北涼写経残巻一」巻の巻頭に貼ってある1紙である。書風は違うし罫線もないが紙質は類似しているように思った。

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・行書目録と装飾体題記と写本年代
  展覧会図録 53番のトルファン由来の増一阿含経第十五表紙は、行書があまり普通なので、五世紀よりもう少し時代が降るのではないかと思った。「増一阿含経第十五」は隷書の波ケツを強調した書体だが、これは一種の装飾体であり、このような題記は北魏時代後半6世紀初めにもあるのでそう古いものとは思えない。
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・展覧会図録 63番隋経で巻軸にまきこまれる部分に後記が書いてあった。こういうのは普通にあるのだろうか?。図録にはその部分の写真なし。

・展覧会図録 84番 唐の格式律令事類 断片 をみると、甘い感じの書法で、いかにも俗流蘭亭風、院体とはこういうものであったかと感じさせるものがある。
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by reijiyam | 2009-07-26 09:38 | ニュースとエッセイ
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